ブックフェア - プロヴァン 2018

ブックフェア - プロヴァン 2018

ブックフェア : ワークショップ・サイン会 | 2018年11月 | プロヴァン (パリ東近郊)

ブックフェア - プロヴァン 2018

サイト:Festival Encres Vives Provins

2018年11月下旬、パリ東郊外のプロヴァンという街のブックフェアに参加しました。

プロヴァンといえば世界遺産に登録されている中世の城壁や街並みで知られており、 パリ市内から電車で1時間半ほどしかからないため、日帰り観光小旅行地として人気の街です。 また、パリ周辺の学校に通う子供たちにとっては、遠足でおとずれる定番の場所のひとつです。

そんな場所で開かれるブックフェアなので、 パリ周辺に住んでいる作家は自宅から日帰りで通います。 私は火曜日にプロヴァン周辺の2つの幼稚園をまわってワークショップを開き、 4日後の土曜日の午後に開かれたサイン会に参加したので、 合計2日間通いました。

火曜日の朝は6時前に自宅を出て、パリ東駅から近郊電車に乗り、 8時前にプロヴァンより数駅手前のロングヴィル駅に到着。 フェアのボランティアチームの一人、ニコルさんという初老のマダムが車で迎えに来てくれました。 そのまま最初の幼稚園に行き、1時間ずつ、2つのクラスでワークショップを開きました。 最初は恥ずかしがって静かだった子どもたちが、だんだんおしゃべりになり、 帰り際には元気いっぱいになるところを今回も見られてよかった!
正午にニコルさんが車でお迎えに来てくれて、そのまま彼女の家でお昼ごはんをご馳走になりました。 犬と暮らすニコルさんのご自宅は古いロマネスク教会に隣接している一軒家。 内装はまるで農家のようで、むかし修道士たちがハーブを育てていたという庭の畑も散歩させてもらい 田舎ののんびりしたひとときを味わうことができました。 (このページの最初の写真はニコルさんの裏庭から見た教会の裏側です)
午後は別の幼稚園1クラスでワークショップをおこないました。 このクラスでは2時間近くもらえたので余裕を持って進めることができ、 子どもたちの方もよく理解してくれたようです。 最近のブックフェアでは、主催者側が作家に「1日にできるだけたくさんのクラスで ワークショップを開いて欲しい」と要望するケースが増えており、 そのぶん1回がかけ足で短くなってしまいがちです。 けれど子どもたちを急かさず制作を楽しんでもらうには、 1時間半は欲しい…とあらためて思いました。 夕方4時50分に帰りの電車に乗り、6時過ぎにパリ東駅に到着。 小旅行に出かけた気分の1日でした。

2日目のプロヴァンは、土曜午後に開催されるフェア会場でのサイン会です。 正午前にパリ東駅発の電車に乗って、1時過ぎにプロヴァン駅に到着。 同じ電車で到着した作家10数人と一緒にミニバスに乗って、会場に向かいました。
市民文化センターの大ホールにはすでにテーブルと本が並べてあり、 午後2時から合同サイン会が始まりました。 児童書作家、バンド・デシネや小説、ドキュメンタリー作家などが60人ほど招待されていました。 私はたまたま先週ブリーヴのフェアで知り合った絵本作家のマリーと 隣合わせになり、彼女とじっくり話す時間が持てたのが 今回のフェアでいちばんうれしかったできごとでした。
そして肝心のサイン会は…。 じつはブックフェアはそれぞれ客層や読者の好みがちがうものなのですが、 このプロヴァンのフェアでは、児童書コーナーにやってくる子どもは 小学生以上がほとんどでした。 本の傾向も、やはりバンド・デシネや読みもの、 古典的でテキストの多い絵本などが高かったようで、 幼児向け絵本のコーナーにまで来てくださる人は少なめでした。 それでもこの土地の子どもたちや、作家同士、 ニコルさんなどフェアの方々との交流の機会を持つことができたのは 良い経験となりました。 夕方6時50分の電車に乗って、8時過ぎにパリ東駅に戻って来ました。

世界遺産である中世の城壁や街並みは、フェア期間中に見ることができませんでした。 けれどパリ東駅から乗り換えなしの1時間半でこんなに簡単に来られるのなら、 こんどは個人的に日帰り小旅行で来てみようかな…と思った、プロヴァンのブックフェアでした。


ところで…まったくの余談でプロヴァンとも関係ありませんが、ここにこっそり書いておきます。
フランスのブックフェアや、図書館、美術館、書店、海外県のフランス人学校などで、 作家がワークショップやサイン会を開いた場合の報酬について。
まずワークショップの報酬の最低賃金は 児童書著者のための労働組合 La Charteによって定められており、毎年少し変動します。 2018年の金額は1日(午前と午後)ワークショップをおこなった場合、額面419€、手取り376€です(社会保障分が天引きされます)。 日本円に換算(11月20日時点)すると額面53,680円、手取り48,159円となります。 半日だと額面253€、手取り227€です。
また、作家の自宅から現地までの交通費(列車や飛行機など)、現地での移動費(バスや地下鉄など)、ホテル等宿泊費、 現地での食事代はすべて主催者が支給すること、と定められています。
サイン会は、報酬の出る場合と出ない場合があります(条件がちょっと複雑です)が、 児童書著者労働組合La Charteが推奨する金額はワークショップの半額です。 つまり1日(午前と午後)だと額面209€、手取り188€。 半日だと額面126€、手取り113€。

これらの内容は、まずフェアや図書館など依頼主から作家への最初のコンタクト(メール)の際に提示され、「報酬はLa Charteの規定に準ずる」と明記されます。 作家が同意した場合はこの内容がすべて記載された契約書をフェアの前日までに両者で交わし(同じ書類を2部準備し両者がサインします)、当日を迎えます。 逆に作家が条件に同意しない場合、交渉したり断ったりすることができます。 報酬はイベントが終わり次第すみやかに(遅くても1ヶ月後ぐらいに)銀行口座に振込または小切手で支払われます。

なお、この一連の流れと契約書システムはブックフェアだけではなく、あらゆる仕事に当てはまります。 まず雇用者と労働者の双方ですべての条件を確認し、契約書を交わしたのちに業務がスタートします。絵本出版も例外ではありません。
以上、余談でした!