アトリエ - シンガポール 2018

アトリエ - シンガポール 2018

アトリエ | 2018年1月 | シンガポール

Ateliers à Singapour 2018 Ateliers à Singapour 2018

2017年10月、シンガポールからメールが届きました。 差出人はフランス人学校の幼稚園セクション図書室室長ヴァネッサという人で、 「2018年の1月に一週間シンガポールに滞在して、 フランス人学校の幼稚園で4日間、 別の仏英バイリンガル幼稚園でも半日ワークショップを開いて欲しい」 という依頼です。 それまでフランス本土以外の学校でワークショップをおこなったことはなく、 そもそもシンガポールに行ったこともありませんでしたが、 せっかくの機会なので喜んで引き受けました。

ヴァネッサとの3ヶ月に渡るメールでの濃密なやりとりを経て、 2018年1月20日土曜日の夜、 真冬のフランスから常夏のシンガポールに向けて出発しました。 翌21日の夕方にホテルのホールでヴァネッサと初対面を果たし、 契約書へのサインなど事務的な手続きや、シンガポールの交通、 おすすめのレストランや観光名所の説明をひと通り受けて、 「じゃあ明日、学校の入り口で!」と別れました。

翌朝からシンガポールフランス人学校への「通勤」が始まりました。 中心部からタクシーで15分ほど郊外の広大な敷地に、 幼稚園から小・中・高校の校舎が4棟そびえるマンモス校です。 生徒も先生もフランス人、聞こえてくる会話もフランス語… まるでフランスのどこかの街の中にいるようでした。 幼稚園セクションは年少から年長まで各学年5クラス。 図書室の責任者ヴァネッサは本の管理だけでなく 園内のイベントの企画運営もおこなっています。

ワークショップは年中5クラスで各2回(計10回)、 年長4クラスで1回ずつ(計4回)おこなうことになりました。 ヴァネッサと先生方からの強い要望があり、 年中組には今回特別なプログラムを準備していました。 私がふだんおこなっているデッサンとぬり絵の「どうぶつのおとしものを見つけよう!」に、 彼らが今年1年をかけて学んでいる「中国の十二支(えと)」の生きものたちを登場させ、 最終的に子供たちの絵を使った1冊のオリジナル絵本をつくる… という「コラボレーション」です。 1ヶ月以上かけて準備し、十二支のイラストも新たに描き下ろしました。 一方、年長組はことば遊びを取り入れたワークショップ 「リーム(韻)を使ってカードをつくろう」をおこなうことに。

時間をかけて準備してきた甲斐があり、 年中組の子供たちは十二支のどうぶつのデッサンとぬり絵をとても楽しんでくれました。 オリジナル絵本の背景に使用する竹林の絵を ぜひ子どもたちに描いてもらいたい、とお願いしておいたところ、 のびのびと個性あふれる絵が出来上がっていました。
4日間ですべてのクラスで予定していたプログラムを無事に終えれば、 あとはヴァネッサが子どもたちの絵を選んでレイアウト、製本し、 オリジナルの絵本を仕上げてくれることになっています。
また、年長組4クラスでおこなった「リーム(韻)」のカード作りワークショップも、 先生方が事前に絵本を読んでくれていたこともありスムーズに進みました。 あるクラスでは、カード作りのあとトークタイムとなり、 子どもたちの質問に答えたりイラストを描いて実演したりと大盛り上がり。 終了後に子どもたち全員の絵が入った寄せ書きをいただきました。
 

月曜から木曜まで4日間通ったおかげで このリセ・フランセでのリズムに慣れたところでしたが、 あっという間に最終登校日を迎えてしまいました。 また、毎日ワークショップのあとの自由時間に街を歩いたり、 ヴァネッサの案内で人気のマリーナ・ベイや植物園などランドマークを訪れたりもしたので、 すっかり”通”のようなつもりになっていましたが、 シンガポール滞在も残すところあと1日。 その夜は幼稚園セクションの園長セバスチャンと、図書室長ヴァネッサ、 そして翌日にワークショップを開催する仏英バイリンガル幼稚園の先生 マリー=ピエールも一緒に、シンガポール名物の焼き鳥「サテ」のお店で 美味しい晩ごはんをいただきました。 数ヶ月間やり取りをしてきたヴァネッサとの仕事もこれでおしまいと思うと さびしくなってしまいましたが、 翌日にもう1日、仏英バイリンガル幼稚園「プチット・エコール」での ワークショップが残っています。

5日目の金曜の朝、ホテルをチェックアウトして荷物をフロントに預け、 中心部から西郊外にある「プチット・エコール」に地下鉄で向かいました。 フランス人学校とは対照的な、のどかな自然公園の林の中にある 小さな校舎の中にその幼稚園はありました。 年長組2クラスの子どもたちと一緒に「リーム(韻)」の カード作りワークショップをおこない、 そのまましばらく子どもたちとおしゃべりをして 和気あいあいとした空気のまま終了。

残る半日は観光にあてることができました。 寺院をめぐったり、インド人街や中華街などを散歩したり、 デパートをのぞいてみたりしているうちに、 とうとう出発の時間となってしまいました。 名残惜しみつつ、シンガポールの夜景を眼下に見ながら帰途につきました。


そして1ヶ月後、シンガポールからの郵便を受け取りました。 子どもたちの絵と私の絵をヴァネッサが編集してくれた、 オリジナルのコラボレーション絵本 『おとしものあずかり"寺院"』(!)です!

Ateliers à Singapour 2018 Ateliers à Singapour 2018 Ateliers à Singapour 2018

りっぱな絵本ができあがりました! それにしても、子どもたちの描いてくれた愛嬌たっぷりのパンダと美しい竹林には、目がくぎづけ!

はじめてのフランス本土以外の場所への出張と、 はじめてのオリジナルのプログラムを準備してのぞんだワークショップ。 はじめてづくしで出発前は不安もありましたが、 思い切って行ってみてよかったと思うことばかりでした。
そして、シンガポールで育つフランス人の子どもたちのことや、 今後もシンガポールで長く暮らしたいと願っているヴァネッサ、 一生おとずれることもないと思っていたシンガポールのフランス人学校に呼ばれた日本人の自分、 生まれた国と暮らす国とはたらく国…など、 いろいろなことを考える機会となったシンガポール出張でした。
また行くことがあれば、ヴァネッサといっしょにもういちど焼き鳥サテとDin Tai Fungの飲茶を食べたい!